Fat Lavaを中心に、東西ドイツから買い付けしたヴィンテージフラワーベースを販売。
それぞれの特徴や背景とともにご紹介したいと思い努めています。
軌跡なども踏まえ長文になりますので、Fat Lavaについてお知りになりたい方はダイレクトに下部までスクロールしてご覧ください。
----------------プロローグ ---このサイトを立ち上げた経緯と自己紹介----------------
Fat LavaやWGP(WestGermanPottery)と呼ばれるカテゴリー。
もっと広範囲では西だけではなくドイツ全般の陶器メーカーだったり、それぞれの特徴や背景についての情報がなかなか乏しく、当時はネットサーフィンで検索してもたどり着くのは英語やドイツ語で書かれていて、かき集めていくのはなかなかに困難なものでした。
「もっと掘り下げて知りたい!」
私自身がそう感じていたのでホームページを立ちあげることに至りました。
私は大阪で金属工芸の制作活動を併せておこなっているkiisと申します。
約8年前に自分の制作の道標としてドイツのうつわに触れ魅了されたことがきっかけで、その興味対象は工業製品から西ドイツなどのアートポタリーへと徐々にシフトチェンジ。今ではコレクターの一人として収集をしています。
もともとはkiisのデザイナー私Kiiが現地に行った時に蚤の市やアンティークショップで個人趣味としての収集を始めていましたが、あくまでも現地には訪れた時のみ。それ以外の日々は、ドイツ人ベルリン在住の親友Nienahとの協業でバイイングを進めていました。
Nienahとのオンラインバイイング(ニーナが実際にマーケットや卸のお店に行って電話やメールをしながら動画や画像を送ってもらいその場でチェックする)形で進めてきました。
コロナ禍以降、出張に行けない/ドイツからの小包が一旦ストップ、ということでピンチになり、しかしそれが逆に功を奏し、ドイツ便再開以降はドイツはもとよりオランダやデンマーク・フィンランドのコレクターさんをメインとして売買をさせてもらえることになりました。
陶器について、コレクターさんたちと話しをしていると「fatlavaやWGPというカテゴライズされた紹介だけでなくもっともっときちんとそれぞれのレーベルや時代背景についても知ってほしい」と言われたことがありました。
私も一作家として、もしも作品が後世に残るとすれば、できれば自分の軌跡も併せて知ってもらいたい。
コレクターさんの言葉にそりゃそうだ!とハッとしたことが後押しとなり、積極的に知ってもらえるように活動しています。
日本では連想するにざっくり【民芸品のうつわ】というカテゴライズされたものたちと同じような感覚とイメージして頂ければわかりやすい気がします。一言で民芸品と言っても、〇〇窯があって、そこにはそれぞれの背景があります。特徴や歴史、いろんなものがあり、それが付加価値として手元と心にしっかり届くもの
だと思っています。
まぁ、単純に私自身がそこに興味津々なので、それを同じような好みの方と共有したい、というところが大きいのですが。。。
それでは、長々とお話ししたところでようやく本題について、触れていきますね。
お待たせしました!!
----------------Fat Lavaとドイツの窯業について ----------------
最近日本でもよく耳にするようになった『Fat Lava』という言葉。
平たくいえば、ミッドセンチュリー時代~おおよそ1980年代頃までを中心に、ドイツ(特に有名なものの大半は西ドイツ)で制作されたある特徴を持った陶器の、その中でもニッチな、ごく限られた特徴をとらえカテゴライズされた陶器のこと。
連想するに【溶岩のよう】なもの。溶岩のように流れているようなディティールだったり、情熱的なマグマのような真っ赤なカラーだったり。はたまた冷えて固まった溶岩、つまり花崗岩のようなザラっとしたテスクチャだったり。厚ぼったい粗い釉薬も象徴的なポイントです。
そういったイメージを頭に描きつつ、当サイトのアイテムをご覧頂ければ「あぁこんな感じかぁ~」と思って頂きやすいかもしれません。
そしてそのFatLavaについて、まだまだ世界コレクターたちとっては未知の研究対象ですが、掘れば掘るほど面白いので、話せる内容はもりだくさん。
以下は長文になりますが、その背景を少し記述してみました。
-------ドイツの陶器産業の変遷とFat Lavaの誕生------
第二次世界大戦後、ドイツは陶器産業を再建するため、国を挙げて取り組んでいたようです。
1950年代から1970年代までの全盛期には、100以上の陶器/磁器会社や陶芸家が西ドイツを主としてアーティスティックな陶器を積極的に生産していました。それらを総称して【West German Art Pottery】と呼ばれています。
デザイン倫理を主張し 曲線的で複合的な要素を融合する、まるでキュビズムのような陶器たちが続々と登場。 それに加え、多種多様な装飾効果を施した製造パターンが確立され、次第にドイツにおける陶器産業の革命は大成功を収めていきました。
1950年代後半~1960年代には、のちに【Fat Lava】と称する、溶岩や花崗岩のようなテクスチャ・ディティールが特徴的な釉薬を施すスタイルが多くの工房や企業で標準的な手法となっていきます。
デザイナーの作ったフォームが承認されると工業的なプロセスで生産され、その後デコレーターのチームが手作業で釉薬を塗っていきます。焼成の過程でも釉薬は活性化し、制御不能な性質が相まって、作品ごとの装飾を固有のものにしていくこともこれらの陶器の大きな魅力の一つと言えるでしょう。
また、作品たちが成長し多様化する中でも、各デザイナーたちは
Gerhaerd MarcksがBauhausで示したガイドラインを体現していた、つまり伝統的な領域を押し広げようとする試みと同時に伝統に対する敬意を持ち続けていたことは、表情の異なるひとつひとつを手にしてみるとわかります。
それらはプロダクトデザインが席巻していく1980年代まで大きな盛り上がりを見せていました。
Scheurich、Ruscha、Carstens、Bay、ES、およびDümler&Breidenなどはとても有名でした。
1970年代初頭に生産が減速し始めた一方で、1980年代までさまざまな趣向の陶器が生産され続けました。その多種多様な形と表現豊かな色でよく知られています。
特に1990年代半ばから世界的にも注目を集め始め、以降コレクターの間で関心が高まり続け、現在に至ります。
近年日本でもかなり多くのアンティークショップやヴィンテージショップで見かけるようになりました。
【Fat Lava】と【West German Art Pottery】という用語はしばしば同じ意味で使われることも多いのですが、実際には意味合いが異なります。
【Fat Lava】は【West German Art Pottery】の中の一部のカテゴリを示しているだけなのです。それが前述した、溶岩のような外観を与える厚い釉薬の種類のものだということです。
そもそも【Fat Lava】という言葉は後付け。
2006年にMark HillとGraham Cooley博士は、キングスリン芸術センターで「Fat Lava」展を主催。イギリスや世界各地から約3500人以上がこの展覧会に訪れたそうで、【Fat lava】という造語が最初に登場したのがこの時です。
Mark Hillは、Graham Cooleyの展覧会とその図録とカタログである "Fat Lava: West German Ceramics of the 60s & 70s"を出版しました。(弊社が2021年1月それを翻訳したJapanese Editionを刊行します。)
それに加え追記をすると、Fat Lavaの様式に見える陶器は、決して西ドイツだけではないのです。
なぜなら、VEB Handelslebenなど東ドイツの国営工場でもFatLava的要素を取り込んでいる様式のものがたくさんあったり、DDR(東ドイツ)のマークがあるものも同様にそれらを発見することがあります。東西に分断される前からあったメーカーがたまたま領地として東に入っただけなので、そりゃあるだろうというところ。
面白いことに、東ドイツ製の美しい陶器たちはポーランドやオランダなど、近隣諸国で見つかることも多いです。東ドイツから、国外に輸出していた、ということですね。
様式のお話に戻せば、陸続きゆえ、フランスなどでもそれらしいものは結構あります。ヴァロリス工房などで作られているのもそれ。1970年代にこちらもメインで作られていました。
そのあたり含めて世界的にも不確かな定義であるがゆえに、とても興味深いものであることは間違いないと思っています。
いまだに30年以上集めているコレクター同士で様々なディスカッションが酒の肴になったりもしていますし、熱心に情報を追い求め続ける研究者も存在しています。
Mark Hillの書籍でさえ、15年経った今だにアップデートを繰り返しているのですから。
新しい発見者になれる権利は誰にだってあると思います。
。。。。。そんなお話、ちょっとワクワクしてきませんか?
それではどうぞ、じっくりと我がサイトをご覧ください☆